アルバム『さきよだ』のタイトルチューンとなった「崎枝」は、夜明け前、今まさに海を渡ろうとしている蝶の姿と、刻々と変化する海と空の一瞬の美しさを歌ったものです。
蝶が海を渡る・・・?
そんな自然界の神秘的な姿を詞に描いたのはボクネンさんでした。
「崎枝」については、ボクネンさんから詞を送られたときのエピソードをご紹介しましょう。
この曲は、琉球音階を使わず琉歌の<8 8 8 6>という節にも反して、
メロ先でボクネンさんに作詞をお願いした初めての曲でした。
当時のレコーディングは、京橋にあるボクネンズアート東京で夜間に行っていました。
TINGARA STUDIOと呼んでいたのは、実はココだったのですね。
いつも軽く食事を済ませてから、夜が更けるまでレコーディングに励むのですが、
食事に出る前にボクネンさんと連絡を取り、作詞をお願いする曲のイメージが
『岬に立つ』という版画作品であることをお伝えしました。
アルバム『さきよだ』の歌詞カードで、この曲の詞と対になっている作品です。
そして文字数だけを指定して、作詞をお願いしたのでした。
つまりこんな感じで。(笑)
8 8 8 11
6 7 6 7
この時点でボクネンさんは、まだメロディーを聴いていません。
詞をいただいてから、メロディーと合わせて細かな部分は調整していこう、
というつもりだったのですが・・・
食事から戻ると、1通のファクシミリが届いていました。
ボクネンさんからです。
「え?もう出来たの!?」
と半信半疑ながら歌ってみると、これがあまりにも見事に曲のイメージとピッタリなのでした。
まるでこのメロディーはこの言葉のためにあった、といってもいいほど見事なハマり方でした。
感動で興奮ぎみのままボクネンさんにお礼の電話を入れ、
急遽この日のレコーディングは「崎枝」に代わり、一晩で歌を録り終えました。
『さきよだ』とは、岬を意味する琉球の古い言葉です。
海の始まりであり陸の始まりでもある岬。
逆に言えば海の終わりであり陸の終わりでもある岬。
そんな2つの世界の境界には、神が宿るのだそうです。

